こんにちは、バンコクで修業中(@lukehide)です。
深夜、バンコクの喧騒が静まり始めた街角で、救急車のサイレンが鳴り響きます。タイ生活8年目を迎えた私にとって、それは「命の価値」を考えさせる音です。なぜなら、タイでは救急車の出動に1,000〜2,000バーツ(約4,000〜8,000円)の料金が必要だからです。
「救急車を呼ぶべきか、自分で病院に行くべきか」
タイの人々は、この判断を料金と共に考えます。一見、厳しい制度に思えるかもしれません。しかし、この仕組みによって、真に緊急を要する患者への迅速な対応が可能になっているのです。
そして今、日本でも大きな変化の波が訪れようとしています。
2024年12月、茨城県が全国で初めて、都道府県単位での救急車搬送時の選定療養費徴収を開始します。この動きは、日本の救急医療の歴史的な転換点となるかもしれません。横浜とタイを行き来する生活を送る私の目には、この変化が特に印象深く映ります。
茨城県が示す新たな救急医療の形
茨城県は2024年12月2日から、救急医療の適正化に向けた画期的な取り組みを開始します。この制度改革の核となるのは、「選定療養費」の新たな運用方式です。
制度の概要
- 開始時期:2024年12月2日午前8時30分
- 対象:県内の200床以上の22の大病院
- 基本料金:7,700円以上
料金体系の詳細
病院名 | 徴収額 |
---|---|
筑波大学附属病院 | 13,200円 |
総合病院土浦協同病院・筑波メディカルセンター | 11,000円 |
白十字総合病院 | 1,100円 |
その他対象病院 | 7,700円 |
導入の背景
- 救急搬送の約60%が大病院に集中
- 搬送患者の約半数が軽症
- 2024年4月からの医師の時間外労働規制強化
タイの救急医療システムから学ぶべきこと
タイは限られた医療資源の中で、効率的な救急医療システムを構築してきました。2008年にタイ国立救急医療センターが設立され、全国規模での救急医療サービス(EMS)を展開しています。
システムの特徴
1. 統合的な緊急通報システム
- 全国統一の緊急番号「1669」の導入
- 24時間体制の英語対応
- 78箇所の地域センターによるネットワーク構築
2. 三層構造の医療提供体制
- 公的医療機関(Universal Coverage Scheme対応)
- 民間医療機関(高度医療対応)
- 非営利組織(地域密着型サービス)
費用体系
提供主体 | 基本料金 | 特徴 |
---|---|---|
公立病院 | 1,000~2,000バーツ | 基礎的な医療機器完備 |
私立病院 | 2,000バーツ以上 | 高度医療対応可能 |
慈善団体 | 1,000バーツ程度 | 地域に密着したサービス |
成功要因
- コミュニティベースの救急対応システム
- 明確な料金体系による適正利用の促進
- 公私連携による医療資源の効率的活用
両国の救急医療の現状比較
日本(茨城県)の現状
平均現場到着時間:10.5分
搬送時の課題
- 軽症患者の割合:47.9%
- 大病院への集中:60%以上
- 救急車の出動コスト:1回約4万5000円
- 医師の時間外労働問題
タイの現状
平均現場到着時間
- バンコク都市部:15分以内
- 地方部:30分以内
システムの特徴
- 三層構造による役割分担
- 料金による需要調整
- 24時間英語対応
比較分析
項目 | 日本(茨城県) | タイ |
---|---|---|
人口10万人当たりの出動件数 | 約4,900件 | 約2,300件 |
救急車の適正利用率 | 52.1% | 78.3% |
料金システム | 2024年12月から有料化 | 従来から有料制 |
救急通報番号 | 119 | 1669 |
民間救急車の活用 | 限定的 | 積極的 |
日本の強み
- 高度な医療技術
- 迅速な現場到着時間
- 充実した医療機器
- 均一なサービス品質
タイの強み
- 効率的な需要調整
- 柔軟な料金体系
- 公私連携の仕組み
- コミュニティベースの対応
新制度導入で期待される効果
茨城県の新制度導入により、以下のような具体的な効果が期待されています。三重県松阪市での先行事例では、導入後1ヶ月で救急車の出動件数が前年同月比で20%以上減少しました。
医療資源の最適化
1. 救急搬送の適正化
- 軽症患者の救急利用抑制
- 重症患者への迅速な対応
- 救急車の稼働率改善:現在の年間14万件から約20%減少見込み
2. 医療機関の負担軽減
- 救急外来の混雑緩和
- 医師の時間外労働削減
- 重症患者への医療資源の集中
経済的効果
1. 医療費の削減
- 救急車出動コスト(1回約4.5万円)の削減
- 不要な救急外来受診の抑制
- 医療保険財政への貢献
2. 収入の確保
- 選定療養費による収入:年間約2億円の見込み
- 医療機関の経営安定化
- 救急医療体制の持続可能性向上
市民への影響と対策
1. 期待される行動変化
- 救急車利用の適正判断
- かかりつけ医の活用促進
- 予防医療への意識向上
2. 支援体制の整備
- 電話相談(#7119)の強化
- 低所得者への配慮措置
- 救急医療情報の周知徹底
項目 | 現状 | 目標値 |
---|---|---|
救急搬送件数 | 年間14万件 | 約11.2万件(20%減) |
不適切利用率 | 約47.9% | 30%以下 |
選定療養費収入 | 0円 | 年間約2億円 |
タイの経験と日本の課題:医療改革への示唆
タイの成功モデルから学ぶ重要ポイント
1. 段階的な料金システム
- 公立病院:基本料金(1,000~2,000バーツ)
- 私立病院:高度医療対応(2,000バーツ以上)
- 地域密着型:低価格帯(1,000バーツ程度)
- 所得層に応じた選択肢の提供
2. 効果的な需要コントロール
- 料金による自然な需要抑制
- 24時間医療相談システム
- 地域医療機関との連携強化
- コミュニティベースの救急対応
3. 公私連携の仕組み
- 民間救急車の積極活用
- 病院間の役割分担の明確化
- 地域特性に応じたサービス提供
- 効率的な医療資源の配分
日本での実装に向けた課題と対策
1. 制度設計の課題
課題 | 対策 | 期待効果 |
---|---|---|
料金設定の適正化 | 地域別の段階的導入 | 需要の適正化 |
支払い能力への配慮 | 減免制度の整備 | 公平性の確保 |
緊急度判断の標準化 | 判断基準の明確化 | 適切な利用促進 |
2. システム整備
- 電話相談(#7119)の24時間体制強化
- AIを活用した緊急度判定システムの導入
- リアルタイムの救急車位置情報共有
- 多言語対応の充実
3. 市民への周知と教育
- 救急医療の適正利用に関する啓発
- かかりつけ医制度の推進
- 応急処置講習の拡充
- 地域医療資源の情報提供
実装スケジュール
時期 | 主な施策 |
---|---|
2024年12月 | 茨城県での制度開始 |
2025年前半 | 初期評価と制度調整 |
2025年後半 | 他地域への展開検討 |
まとめ:日本の救急医療の未来像
茨城県の新制度は、タイのような「受益者負担」と「公共サービス」のバランスを取る新しい形を目指すものといえます。この取り組みが成功すれば、他の自治体にも広がる可能性があります。
私たちは、救急車を「タクシー代わり」ではなく、真に必要な人のための貴重な医療資源として認識し直す必要があります。そのためには、タイのように、適切な負担と効率的なシステムの構築が不可欠なのです。
救急医療は、社会全体で支える必要がある重要なインフラです。茨城県の取り組みが、日本の救急医療の新しいモデルとなることを期待しています。
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